障害者雇用を「数だけの話」にしない――働く当事者の成長と、共同雇用のこれからを伝える勉強会レポート

2026年7月1日(水)、SCC千駄ヶ谷コミュニティセンターにて、ウィズダイバーシティ有限責任事業組合が主催する「障害者共同雇用の組合報告会」を開催しましたので、お知らせいたします。

この報告会は、ウィズダイバーシティに参加する企業が全国から集まり、これまでの取り組みや成果を共有するとともに、障害者雇用のさらなる拡大について学び合う場として開催したものです。2026年度は20社以上、約50名の方にご参加いただきました。

ウィズダイバーシティ参加企業の集合写真

2026年7月1日は、民間企業における障害者の法定雇用率が2.7%へ引き上げられた日でもあります。報告会では、ローランズが同日に公表した声明「LORANSが問い続けたいこと」に込めた思いや、ウィズダイバーシティの今後の方針をお伝えしました。後半には、組合企業から発注いただいている業務に携わる5名のスタッフから、現在の仕事内容や仕事を通じた変化、今後の目標について発表しました。

本レポートでは、報告会の内容をご紹介しながら、企業と障害者福祉事業所がともに雇用をつくる共同雇用の現在地と、そこで働くスタッフ一人ひとりの声をお伝えします。

勉強会の開催概要はこちらのプレスリリースをご参照ください。

7/1原宿 中小企業向け・障害者共同雇用の組合報告会を開催、参加者募集

目次

障害者雇用を「数だけの話」にしないために

最初に、ウィズダイバーシティ発起人の福寿から、ローランズが障害者雇用に取り組むようになった背景と、7/1に発表した声明「LORANSが問い続けたいこと」に込めた思いを説明しました。

ローランズが障害者雇用に取り組む原点

福寿が障害者雇用に関心を持ったきっかけは、学生時代に教育実習の一環で、特別支援学校を訪れたことです。そこで出会った子どもたちは、お花屋さんやケーキ屋さん、パイロットなど、目を輝かせながら将来の夢を語っていました。一方で、当時は就職先や選べる職種が限られ、その夢をかなえることが難しい状況にありました。

自分にとって当たり前だった「働く」ということが、全ての人にとって当たり前ではないと知り、「子どもたちの働く夢をかなえられる大人になることが、自分自身の夢になった」と振り返ります。

数字で見る障害者雇用の現状

講演では、障害者雇用を取り巻く状況について、数字を交えながら説明しました。

国内の障害者数は約1,165万人で、このうち18歳から64歳までの在宅者は約487万人です。一方、民間企業などで雇用されている障害者は約70.5万人で、18歳から64歳までの在宅者に対する就労率は14.5%にとどまります。

また、民間企業における障害者の法定雇用率は、2024年4月に2.3%から2.5%へ引き上がり、2026年7月1日からは2.7%となりました。これに伴い、障害者を1人以上雇用することが必須となる対象企業も、従業員40人以上から37.5人以上へと広がりました。

一方、法定雇用率を達成している企業は46.0%にとどまります。法定雇用率の引き上げにより、企業が雇用率や雇用人数を意識する必要性は、今後さらに高まっていきます。一方で、障害者雇用が「何人雇用したか」「雇用率を達成したか」といった数字だけの話になってしまうことへの課題もあります。

数字の先にいる、一人ひとりを見る

福寿からは、「数を追いかける必要がある中でも、その数とともにあるのは人であることを忘れずに、障害者雇用と向き合う必要がある」とお伝えしました。

数字の背景には、一人ひとりの暮らしがあり、働くことへの思いがあります。障害者を雇用義務や社会貢献の対象として捉えるのではなく、ともに未来をつくる働く仲間、企業の成長を支える力として向き合うことが大切です。

また、企業は「どのような仕事を任せればよいのか」、障害当事者は「自分に合った仕事を選べるのか」、障害福祉事業所は訓練生に対して「実践的な仕事や訓練の機会をどう確保するか」と、それぞれ異なる課題を抱えています。企業と福祉がそれぞれの専門性を持ち寄り、つながることで、一社だけでは難しかった雇用にも、諦めずに取り組んでいくことができます。

ローランズは今回、

・数だけではなく人を見ること
・義務ではなく働く仲間・戦力として向き合うこと
・企業と福祉の協業が新たな選択と前進をつくること
を、これからも問い続けたい考えとして公表しました。

声明の詳細は、ローランズ公式サイトの「LORANSが問い続けたいこと」をご覧ください。

企業と福祉がともにつくる「共同雇用」の現在地

続いて、ウィズダイバーシティの仕組みと、これまでの成果について説明しました。

企業からの発注が、雇用と成長を生み出す

ウィズダイバーシティは、一定の要件を満たす複数の事業主で障害者の実雇用率を通算できる「事業協同組合等算定特例」の認定を、日本で初めて受けた組合です。障害者雇用に取り組む中小企業と就労継続支援A型事業所が参加し、共同で障害者雇用を進めています。

参加企業が、障害者福祉事業所の商品やサービスを継続的に購入・発注することで、事業所に仕事が生まれます。仕事が増えることで、新たな雇用や就労訓練の機会につながり、そこで働くスタッフは実務経験を重ねながら、技術や判断力を身につけていきます。

良い仕事を継続して経験することで、担当できる業務が増え、新しい職域にも挑戦できるようになります。組合企業から集まった仕事によって、1年前よりできることが増えたスタッフや、話す言葉、表情に変化が生まれたスタッフもいます。

ウィズダイバーシティでは、共同雇用を、自社雇用か何もしないかという二択の間にある、自社雇用へ向けた「0.5歩」の選択肢と位置づけています。

20の企業・事業所で支える共同雇用の実績

現在、ウィズダイバーシティには中小企業17社と障害福祉事業所3事業所の、計20の企業・事業所が参加しています。算定基礎労働者数は4,082人、障害者雇用数(カウント数)は213人、実雇用率は5.23%(※)です。

また、参加するA型事業所から福祉的な就労支援を卒業し、一般企業への就職など、次のキャリアへ進んだ人は78名うまれました。こうした成果を支えているのは、企業と障害者福祉事業所の連携だけではありません。実際に仕事を担い、日々経験を重ねているスタッフ一人ひとりの存在があります。

※2026年6月1日時点。

共同雇用を、自社での直接雇用につなげる

報告会では、ウィズダイバーシティが今後強化する方針についても説明しました。

今後、特に取り組んでいくのは、

・本質的な経済活動への参加を当たり前にすること
・共同雇用から直接雇用への移行サイクルをつくること
・参加企業と障害者福祉事業所を増やすこと

の3点です。

組合に参加する障害者福祉事業所からは、組合内外の企業も含め、すでに70名を超える当事者が一般就労へ進んでいます。今後は、組合内での直接雇用をより増やすことを目指します。

また、直接雇用は採用した時点がゴールではありません。採用後も本人の経験や強みを幅広く捉え、役割やキャリアを調整していく必要があります。組合事務局も、採用前だけでなく、採用後の定着やキャリア形成について相談できるパートナーを目指します。

障害者福祉事業所で働くスタッフの声

報告会の後半では、ウィズダイバーシティに参加している障害者福祉事業所で働く5名のスタッフから、現在担当している仕事や、仕事を通じて感じた変化、今後の目標を紹介していただきました。

フラワー部門スタッフ:Aさん~苦手だったアレンジメントに再挑戦

ローランズのフラワー部門で働くAさんは、観葉植物や胡蝶蘭のラッピング、アレンジメント制作、進捗報告、梱包までを一貫して担当しています。

花束やアレンジメントには長い間苦手意識があり、思うように仕上がらず、自信をなくすこともあったそうです。しかし、2026年2月から改めて挑戦し、現在では5,000円クラスのアレンジメントを制作できるようになりました。

今後は、1万円クラスのアレンジメントやスタンド花にも挑戦し、花束の技術もさらに磨いていきたいと目標を語りました。

「できなかったことができるようになる瞬間は、本当にうれしいです。ローランズで働いて、できることが増えました。今年が一番自分の成長を実感しています。昔の自分に一言かけるとしたら『継続は力なり』と伝えたいです。」

カフェ・フード部門スタッフ:Bさん~任される仕事が増え、自信につながる

ローランズカフェ・フード部門で働くBさんは、弁当の調理・盛り付けや、ドライフルーツの個包装などを担当しています。

決められた時間内に作業を終えることにプレッシャーを感じることもありますが、前日にできる準備を済ませたり、少しずつ作業のペースを上げたりしながら取り組んでいます。同じ作業が続くときには、外の空気を吸うなど、気持ちを切り替える工夫もしています。

以前は外に出ることが難しい時期もありましたが、就労移行支援、就労継続支援B型、A型と段階を踏みながら経験を重ねてきました。現在では、取材への対応やメンバーへの指示出しなど、以前は想像できなかった役割も担っています。

「やりがいを感じるのは、お弁当や発注のリピート依頼が来た時です。『美味しそう』という声を聞けたときは本当に嬉しくて、また頑張ろうと思います。昔の自分には『諦めないでよかったね』と伝えたいです。」

AさんとBさんは、BS朝日「ウェルビーイング、見つけた」にも出演しています。ぜひご覧ください。

グリーン部門スタッフ:Cさん~植物を観察する力を磨き、庭師を目指す

グリーン部門で働くCさんは、オフィスや施設の植栽、レンタルグリーンの管理を担当しています。主な仕事内容は、剪定、水やり、病害虫の確認、薬剤散布など、植物の健康と景観を守る作業です。

発表では、伸びきった植物を一本ずつ丁寧に剪定し、先輩スタッフから仕上がりを評価された経験を紹介しました。荒れた空間や伸びた枝が整い、きれいになった瞬間に、この仕事をやっていてよかったと感じると語ります。

「仕事を始めてからは、花が咲く時期や葉が落ちる時期、鳥や虫の声にも気づくようになり、植物を通して季節を感じられるようになりました。今後は造園技能士の資格を取得し、庭師と呼ばれる存在になりたいです。」

アーティスト:かなっぺさん~作品が人に届くことが、生きる力につながる

株式会社ありがとうファームに所属するかなっぺさんは、企業向けのレンタルアートや、アートノートなどの作品を制作しています。

2026年2月に開催された「おかやまインクルーシブフェスティバル」内で開催されたコンテストでは、163点の作品のなかからグランプリを受賞。受賞を通して、改めて「自分は絵を描けるのだ」と実感できたそうです。

過去には、生きることが難しいと感じるほどつらい時期もありました。しかし、周囲の支えを受けながらアートの仕事を続け、自分の作品を評価し、レンタルしてくれる企業や人の存在を知ることで、「生きていていい」と思えるようになったと語りました。

「自分一人で描いて終わるのではなく、仕事を通していろいろな人に見てもらえる機会があることは、とてもありがたいです。いいなと思って借りてくださることが、自分の生きる力になっています。今後は、子どもや保護者と一緒に楽しめるアートワークショップにも挑戦してみたいです。」

一般雇用へ移行したスタッフ:Dさん~支援を受ける立場から、支える立場へ

最後に登壇したKEIPE株式会社に所属するDさんは、2023年に就労継続支援A型事業所の利用者として入社し、2026年2月に一般雇用社員へ移行しました。現在は、事業所の利用を希望する人と職場をつなぐリクルーター業務と、職業指導員を担当しています。

過去には短期離職を繰り返し、仕事を続けることに難しさを感じていたといいます。障害があっても人生の自由を選べる。そんな社会を自分自身の姿から会社を通して広げていきたい、と思い入社を決意をしたと語ります。

「一人ひとりが自分らしさに蓋をせずに働ける場所のお手本となり、社会へ届けていきたいです。今後は支援する立場として、過去に自分がかけてもらった『あなたはあなたのままでいいんだよ』という言葉を、働くことに不安を抱える人へ伝えられる存在になりたいです。」

成長できる仕事と役割が、働き続ける力になる

5名の発表後には、参加者との質疑応答を行いました。

障害と向き合う方は長期就労が課題とも聞きます。現在の職場で長く働き続けられている理由を教えてください。

かなっぺさん:自分が成長できていると感じられることが、仕事を続ける大きな理由になっています。

Dさん:役割と責任を任されることで、自分が必要とされていることや、自分の強みを生かせていることを実感できます。また、困ったときに話を聞いてもらえる環境も、働き続けるために大切だと思います。

参加者の皆様から寄せられた声

報告会の終盤には、参加者の皆様から感想をいただきました。

・成長したい、やりがいを持ちたい、役割や責任を担いたいという思いは、障害の有無にかかわらず、働く人に共通していると感じた。

・企業が仕事を発注することは、業務を依頼するだけでなく、本人の技術や自信、将来の選択肢を広げることにもつながると知り、自社でもっと依頼できる業務を増やしていきたい。

・当事者が成長を実感できる仕事を企業側がつくる必要がある。少人数の企業でも共同雇用なら障害者雇用に取り組める可能性を感じた。事務業務や製造業務、オフィス環境を整える仕事など、自社から切り出せる業務をもっと考えていきたい。

参加者の感想からは、当事者の言葉に直接触れることが、障害者雇用を制度や数字だけでなく、具体的な仕事と人の姿から考える機会になったことがうかがえました。

報告会終了後、福祉事業所から持ち寄ったランチを食べながら、参加者間の交流を深めました。

左:ももジェラート(KEIPE株式会社)
右:ランチボックス(株式会社ローランズ)

企業と福祉のつながりを、全国へ

法定雇用率への対応は、障害者雇用に取り組むきっかけの一つです。その先で、実際に働く一人ひとりに目を向け、仕事を通じた成長や役割、次のキャリアにつなげていくことが大切です。

ウィズダイバーシティでは、組合に参加されたい中小企業や障害者福祉事業所を募集しています。ご関心のある方は、お問い合わせページよりご連絡ください。

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