ウィズダイバーシティがつないだ絆――ディエスジャパン×ありがとうファームのコラボ最前線

本記事では、ディエスジャパンとありがとうファームがウィズダイバーシティ参加に至った経緯や、両社のコラボレーション事例、今後の展望について、ウィズダイバーシティ発起人の福寿が、株式会社ディエスジャパン代表取締役社長 北條 陽子氏、株式会社東京ディエスジャパン取締役小野 晴彦氏、そして株式会社ありがとうファーム代表取締役 木庭 康輔氏、取締役副社長 馬場拓郎氏にお話を伺った様子をお届けします。
(インタビュー実施日:2025年2月17日)

写真左より
株式会社ありがとうファーム 取締役副社長・馬場 拓郎氏
株式会社ありがとうファーム 代表取締役・木庭 康輔氏
ウィズダイバーシティ発起人・福寿満希(株式会社ローランズ 代表取締役)
株式会社ディエスジャパン 代表取締役・北條 陽子氏
株式会社東京ディエスジャパン 取締役・小野 晴彦氏 

目次

大阪発・中小企業のカーボンニュートラルを推進!ディエスジャパンが掲げる「SUSTAINABLE FUTURE 2050」

株式会社ディエスジャパン 代表取締役・北條 陽子氏

福寿:まずはディエスジャパン様の事業内容について教えてください。

北條:ディエスジャパン及び株式会社東京ディエスジャパン(以下「ディエスジャパン」)は東大阪市に本社を置く企業で、主な事業はリユーストナー(※1)カートリッジです。

ディエスジャパングループは、1985年の創業当初から「共生社会の実現」を経営理念とし、これまで全国の約64,200社超の企業に、リユーストナーを中心としたオフィス環境改善提案を行ってきました

福寿:環境に配慮した製品やサービスを展開してきたディエスジャパン様が掲げる「SUSTAINABLE FUTURE 2050」について教えていただけますか?

北條:自社のGHG排出量ゼロ(※2)を実現する、サプライチェーンにおいて排出されるGHGの削減、お客様の事業活動におけるGHG排出量ゼロに貢献するという3つのチャレンジを掲げています。

現在、日本は年間で12億トンを超える温室効果ガスを排出しており、2050年までに、これを実質ゼロにする必要があります。

企業における脱炭素の取り組みは、現在大企業が中心で、中小企業はまだまだ進んでいません。さらに、脱炭素経営を実践する国内企業は20パーセント程度にとどまっています。

脱炭素経営に未だ踏み出せていない中小企業をもっと増やすことを目指し、GHG排出量の把握、そして排出量を減らすためのステップをサポートする事業を展開しています。

株式会社ディエスジャパンHP

※1リユーストナー…使用済みのトナーカートリッジに、トナーの補充や補修などを施し再利用して作られたトナーカートリッジ。再生トナーやリサイクルトナーとも呼ばれる。同じトナーカートリッジを複数回利用できるため、純正のトナーカートリッジと比べて、廃プラスチック削減やGHG排出量削減に貢献する。

※2GHG(温室効果ガス)排出量ゼロ…温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出をゼロにすること

ありがとうファームが目指す、アートとサービスでつなぐ共生社会

福寿:ありがとうございます!続いてありがとうファーム様の事業内容を教えてください。

木庭:株式会社ありがとうファームは、岡山市北区表町商店街を拠点に、アートとサービス業を2本柱にした多機能型事業所を展開しています。企業理念「生き生きと堂々と、人生を生きる」のもと、「知ることは、障がいを無くす®」というスローガンを掲げ、障害者が自己実現できる社会の実現を目指しています。

主に取り組んでいるのは、ハンディキャップアーティストのアート作品の事業化です。

株式会社ありがとうファームHP

今は亡き創業者の言葉をきっかけに、2022年にウィズダイバーシティに参加

株式会社ありがとうファーム 代表取締役・木庭 康輔氏

 福寿:ありがとうファーム様がウィズダイバーシティを知ったきっかけについて教えていただけますか?

 木庭:もともと当社の創業者である父(木庭 寛樹氏)から、ウィズダイバーシティの話を聞いていたんです。残念ながら父は2022年に病気で亡くなりましたが、同じ年に幕張であったあるイベントに出展した際、偶然ローランズさんのブースを見つけたのです。お話をすると当社がウィズダイバーシティの参画要件を満たしていることが分かって、2023年に参加しました。

 福寿:参加の決め手は何でしたか?

 馬場:中小企業と障害者福祉事業者が、障害者雇用を一緒に進めることができる点です。

中小企業と障害者福祉事業者は、これまで接点がほとんどありませんでした。

ウィズダイバーシティが活用しているのは算定特例制度のうち「事業協同組合等算定特例」という制度ですが、これは大企業がよく活用している、特例子会社の中小企業版のような仕組みです。

組合に参加している中小企業は、同じ組合に参加している障害福祉事業者に一定額以上の業務を発注することで、障害者の雇用を新たに生み出します。中小企業は発注額に応じた成果物(商品・サービス)を受け取ることができるほか、共同で障害者雇用を創出していることで、法定雇用率を満たすことができます。

障害福祉事業者であるありがとうファームとしては、ウィズダイバーシティの仕組みを通じて、これまでなかなか接点を持ちづらかった、ビジネスセクターである中小企業との接点がさらに増え、ハンディキャップアーティストのアート作品の導入をもっと増やすことができる。

これは中小企業・障害者福祉事業者双方にメリットがあると感じましたし、ビジネスセクターである中小企業との出会いを通じた、新たな可能性にもときめきました(笑)

福寿:組合全体での障害者雇用創出をきっかけとし、そこから密に企業とつながっていける点にも魅力を感じていただけたのですね。

ディエスジャパン障害者雇用の課題〜特定部署に負担大、障害者雇用への理解が社内に広がらない

ウィズダイバーシティ発起人・福寿満希(株式会社ローランズ 代表取締役)
ウィズダイバーシティ発起人・福寿満希(株式会社ローランズ 代表取締役)

福寿:ディエスジャパン様がウィズダイバーシティに参加されたのは2021年(※3)でした。初めて知っていただいたときの印象はいかがでしたか?

※3 株式会社東京ディエスジャパンは2021年、株式会社ディエスジャパンはウィズダイバーシティに国家戦略特区以外の企業も参加できるようになった、2023年に参加

株式会社東京ディエスジャパン 取締役・小野 晴彦氏 

小野:当時、ディエスジャパンでは、大阪本社の総務人事部門で障害者の方を雇用していました。しかし、その部署以外に障害者雇用が広がらないといった問題を抱えていました。

福寿:当時は、障害者雇用においてどんな課題があったのですか?

北條:雇用した方の障害について十分に理解できておらず、部署のメンバーとコミュニケーションがうまくいかない場面がよくありました。自治体の障害者雇用支援も受けていましたが、具体的なアドバイスを受けることはできず、基本的には企業の判断に委ねられていました。

その結果、障害者の方が「この会社で働くのはつらい」と退職してしまって……。受け入れた部署だけでなく、全社員に障害者雇用への理解を深めてもらいたくて啓蒙活動をしていましたが、結局は一部のメンバーに任せきりになっていました

中小企業にとって障害者雇用は、環境整備などハードルが高く難しいことが現実です。ディエスジャパングループも例外ではなく、経営理念である共生社会の実現に向けて障害者雇用に取り組んできたものの、中小企業が自社で雇用を進めるには、様々な課題がありました。

小野:このように悩んでいた頃、帰宅後たまたま見たテレビ番組(テレビ東京・ワールドビジネスサテライト)でウィズダイバーシティが取り上げられていたのです。

テレビ東京 ワールドビジネスサテライト「企業だけでなく行政も注目! 30歳女性社長の挑戦」

※視聴には有料会員登録が必要です

これなら当社も参加できるのではないかと考え、すぐにウィズダイバーシティさんにアポイントを取って原宿のオフィスへ向かいました。お話を聞いてますます魅力を感じ、原宿駅まで戻る道すがら北條に連絡を取り「ディエスジャパンもすぐ参加しましょう!」と伝えたのを覚えています。

北條:本来は障害の有無にかかわらず、すべての社員に「この会社で働いてよかった」と思ってもらいたい。でもそれができないという状況を脱却すべく、ウィズダイバーシティへの参加をきっかけに自社の体制を立て直そうと考えたのです。

福寿:自社雇用の実現を目標として、まずは福祉事業者とともに歩みをスタートされたのですね。

厚生労働省の調査によると、障害者雇用の法定雇用率が未達成の企業は全国で63,364社あり、障害者を1人も雇用していない企業(0人雇用企業)は36,485社と、未達成企業に占める割合は、57.6%となっています。

中小企業における障害者雇用には、どのような部分にハードルがあるとお考えですか?

北條:現在はどこも人材不足ですし、大企業のように、障害者雇用の専任の担当を配置できる会社は少ないでしょう。当社も含めて、総務部が兼務されるケースが多いように感じます。

ウィズダイバーシティでは、障害者雇用のプロフェッショナルである障害者福祉事業者のみなさんからたくさん教えていただけるので、今後自社雇用を目指すうえでも、大変心強いです。

福寿:障害と一口に言っても知的、身体、精神とさまざまなジャンルがあります。本来なら専門の部署やプロジェクトチームを作る必要があるものの、人材不足の中で障害者雇用にリソースを割くのが難しい会社が多いですね。

ITエンジニアにECショップのデータ分析を依頼、売上が倍増。一般企業就職を実現したメンバーも。

福寿:現在はどんな業務を切り出してウィズダイバーシティに発注いただいていますか? 

北條:社内にフラワー事業部を立ち上げ、私たちの強みである営業力を生かして、全国に約6万4千社ほどあるお取引先から、胡蝶蘭のオーダーを受けています。他にも顧客への手土産としてドライフルーツギフトや、お花を家族にプレゼントしたいという社員がいれば、ローランズさんに発注しています。

そしてローランズさんのオフィスサポート部門にお願いしているのが、ディエスジャパンのが運営しているECショップのデータ分析です。

ローランズ所属の高いITスキルを持ったエンジニアの方にサポートいただき、ECショップの売り上げは倍増、サイト訪問から購買に転じる「転換率」は4倍にまで上がりました。

本社会議室や各工場には、ありがとうファームさんのレンタルアートを展示し、一部社員の名刺裏にはアートを印刷しています。

ディエスジャパンの会議室に展示している、ありがとうファーム所属アーティストの作品
ディエスジャパンの会議室に展示している、ありがとうファーム所属アーティストの作品

馬場:ディエスジャパンの案件の企画立ち上げに関わった、弊社の障害当事者のメンバーが、今年の2月に一般企業への就職を実現したんです。自分が主役としてゼロから企画に関わるという機会が、自分の中で大きな糧になったと話していました。

 小野:それは嬉しいですね。事業を成功させようと協働する中で、アーティストの方から斬新なアイディアをいただくことも多くありました。

 北條:他にも新規事業が増えていき、現在はウィズダイバーシティに関する事業に、35名の社員が関わるまでになりました当初の課題だった「全社員への障害者雇用への理解促進」も、徐々に進んでいます 

福寿:それはとても嬉しいです。まさにありがとうファーム様のスローガンである「知ることは、障害を無くす」の連鎖が社内に起きているのですね。

パートナー企業との質の高いコミュニケーションがメンバーにもたらした変化

写真左:株式会社ありがとうファーム 取締役副社長・馬場 拓郎氏
写真右:株式会社ありがとうファーム 代表取締役・木庭 康輔氏
写真左:株式会社ありがとうファーム 取締役副社長・馬場 拓郎氏
写真右:株式会社ありがとうファーム 代表取締役・木庭 康輔氏

福寿:先ほど一般企業に就職されたメンバーのお話がありましたが、他にはどんな変化がありましたか?

木庭:ありがとうファームが大好きで、もともと一般企業への就職は考えられないと話していたメンバーが、ある時「パートナー企業の人たちを呼んでカラオケ大会をしませんか?」と言ったのです

理由を聞いてみると、「自分が思っていたよりも、意外と社会には私のことを応援してくれている人が多いんだと気づいた。それをもっとたくさんの人に知ってもらいたい。」と話してくれました。

ウィズダイバーシティに参加したことでディエスジャパンさんを始めとする企業との接点が増え、さらに質の高いコミュニケーションを経験することで、彼女の中に気づきが生まれたと感じています。

福寿:とても素敵な変化ですね。ウィズダイバーシティという仕組みを通じて最終的に当事者の方に届く、私たちの理想とするところです。 

ウィズダイバーシティ参加によって、障害者雇用に関わる社員が、2人から従業員の約4割まで増えた

福寿:ウィズダイバーシティ参加によって、社員の理解促進につながったというお話がありましたが、具体的な変化を実感されていますか?

北條:もともと障害者雇用に関わるのは大阪本社の総務人事2名だけで、社内の認知度でいうとわずか0.5%でした。

今は本社のほかにも、群馬や福岡にある自社工場にレンタルアートをかざって多くの社員の目に触れるようにしたり、先ほどお話したようにフラワー事業部ができましたので、ウィズダイバーシティに関連する事業に触れている従業員は、全体の30~40%、120名くらいまでに増えました

福寿:0.5%から40%ですから、数字にすると80倍ですね!それだけ大きな変化を生んだ要因は何でしょうか?

北條:導入したサービスが複数あったこと、社員による発信を強化したことだと思っています。

当社では、有志社員による分科会活動のひとつに「人のチカラ」プロジェクトがあり、当社の社会貢献活動を社内外にブログで発信しています。社員が自分たちの目線で発信した内容を通して、一人ひとりが障害者雇用を身近なことと捉え、一緒にお客様の役にたっていく仲間だという意識を持つようになったと感じています。

ディエスジャパングループの社会貢献活動をまとめたHP「人のチカラプロジェクト

アートと融合した「カームダウンスペース」が大阪・花園ラグビー場に登場予定

福寿:視線や光などの刺激が苦手な人が気持ちを落ち着かせることができる場所「カームダウンスペース」のプロジェクトも進行中と伺いました。

馬場:私たちが岡山県のオーエム機器株式会社さんと共同開発したアートカームダウンスペースを、ディエスジャパンさんとの取り組みで、東大阪にある花園ラグビー場に設置することが決まったんです。


アートカームダウンスペースの設置イメージ

北條:カームダウンスペースはいろいろな自治体や公共施設に導入されていますが、無機質なボックスや衝立のようなものがほとんどです。アートとコラボすることによって、カームダウンスペースという存在そのものを広く知っていただく良いきっかけになると思っています。

福寿:素晴らしい取り組みですね。コラボレーションによって新規事業が続々と生まれている印象ですが、その秘訣はあるのですか?

北條:密に情報交換をする中で、ジャストアイデアで思いつくプロジェクトがあったり、当社のメンバーから「ウィズダイバーシティさんと一緒にできませんかね?」という申し出があったり、ここ数年でそんなケースが増えてきました。

価値観を共有し、良い循環を広げるパートナーシップの重要性

福寿:共同雇用を通じてつながったディエスジャパン様との関わりを通して、社内で意識の変化はありましたか?

馬場:最近よく議題に上がるのが、離れた場所にいるお客様へどうすれば感謝を伝えられるかということです。

レンタルアートをご利用いただいている県外のお客様の大半は、ディエスジャパンさんを通じて出会いました。もしも私たちがウィズダイバーシティに参加していなければ、県外企業との出会いもなく、このような議論が生まれることもありませんでした。そう考えると、本当に良いきっかけをいただいたと感じています。

福寿:現在、全国に4000ヵ所あるA型事業所の約半数が、経営がうまくいっていない状態です。

高いスキルをもつ障害者がいて、障害者に対する就業支援ができ、さらに商品も売れる ……そんな理想的な体制を1つの障害者福祉事業者だけで築くのは、非常に高いハードルと言えます。

自社だけでの事業展開に限界を感じる事業所が多い中で、パートナー企業とのつながりを活かし、新たな事業を次々と生み出している、ありがとうファームさんの姿は理想的だと思います。

福祉業界が変革を実現するための鍵のひとつは、ビジネスセクターである企業との接点を増やすことだと考えていますが、この点についてどう思われますか?

馬場:私もそう思います。ディエスジャパンさんの営業スタイルからは多くのことを学びました。ディエスジャパンさんは全国に多くの取引先がありますが、お客様のご要望に真摯に向き合い、信頼関係構築を大事にしているから、それだけの数のお客様と長いお付き合いができているのです。

ありがとうファームのメンバーも高い業務品質をだそうと、一生懸命応えてくれています。結果、ビジネスシーンにも自信をもってだせる、よりよい商品やサービスに成長していると思います

福寿:ありがとうファーム様にとって、ディエスジャパン様はどんな存在ですか?

木庭:ひとことで言うなら、価値観を共有してつながり、良い循環を広げていけるパートナーです。

私たちは、ウィズダイバーシティの理念に共感して出会いました。そして弊社の思いや理念に共感いただき、レンタルアートのご利用や、新たなお客様との出会いというように、つながりが拡大していきました。

ディエスジャパンさんのおかげで多くのご縁をいただいていますし、期待以上のものを届けることでディエスジャパンさんの信頼も高められると思っています。お互いの得意分野を生かしながら、今後もベストを尽くしていきます。

北條:実は、これまでは「うちのほうが安いですよ」「うちの方が早くお届けしますよ」という営業スタイルで勝負してきた場面もあったんです。

でもローランズさんやありがとうファームさんのサービスをお客様に紹介するときには、「私たちもこんな取り組みをすることで自社が抱えていた課題の解決につなげているんですよ」とお伝えしています。

「ディエスジャパンさんは何屋さんになったの」なんて言われることもありますが、主事業であるリユーストナーとは別の話ができるようになり、お客様とのつながりがより深くなりました。私たちも、ウィズダイバーシティに参加して本当に良かったと思っています。

福寿:そう言っていただけて本当に嬉しいです。ディエスジャパン様は社内にフラワー事業部を作って胡蝶蘭の販売をしたり、新たなプロダクトを生み出したりと、会社の中に当事者の仕事をたくさん入れ込んでいただいていると感じています。

ディエスジャパン様のような企業がこれから増えていくことを願って、モデルケースとしてどんどん発信していけたら嬉しいなと思っています。

今後の展望:ウィズダイバーシティへの参加を通して広がる未来

福寿:最後に、今後の展望をお聞かせください。

木庭:おかげさまで、私たちがウィズダイバーシティに参加してから19名の方が一般企業に就職し、半年間の就業を経て職場に定着しました。

先ほど北條社長が言われたように、中小企業が障害者を雇用するには、いくつものハードルが存在します。そんな中でディエスジャパンさんは、自社雇用を実現するためのファーストステップとしてウィズダイバーシティへの参加を決められました。

一過性の取り組みで終わることなく、その先にある障害者雇用を推進できる在り方を、企業と事業所が互いに模索していけると感じています。そして、障害がある方自身が望む生き方を実現できるような社会になってほしい、というのが一番の思いです。

馬場:現在、弊社は「おかやまインクルーシブフェスティバル」という事業の事務局を担当し、メンバー運営に携わっています。これは2024年にスタートした岡山市と取り組んでいる事業で、ディエスジャパンさんにも協賛いただきました。

岡山芸術創造劇場ハレノワから、私たちの拠点である表町商店街、そして街へというコンセプトで、中四国のハンディキャップアーティストの作品を展示したり、障害の有無にかかわらず楽しめる創作劇のワークショップ、おかやまインクルーシブアワードやマルシェイベントというものも開催します。

地域に必要とされる会社でありたい、地域にないものをどんどん作っていきたいという思いでこの事業に携わっていますが、今年は昨年に比べて4倍ほどの規模になる予定なので、パートナー企業様にもサポートいただきながら、サポートしてよかったなと思ってもらえるイベントを作っていきたいと思っています。

福寿:ディエスジャパン様はいかがでしょう?

小野:現時点では全社員がこの取り組みを十分に理解しているわけではありません。どうすれば社内のつながりを強化し、理念を浸透させられるのかを模索しているところです。

これまで何度もローランズさんやありがとうファームさんを訪問する中で、働く当事者の方々が自信と誇りを持って生き生きと働く姿に、強く心を打たれました。一方で、「自分は普段、仕事に対してどれだけ真剣に向き合えているだろうか?」と考えさせられることもあります。

こうした経験を社内に共有し、何かを感じ取ってもらえる機会をつくりたいと考えています。

北條:私たちは「人のチカラ」というキーワードをミッションに掲げています。最終的な目標は、当社で働く人、取引先、地域の方々が、お互いの良さを理解しながら協力し、共生できる社会の実現です。

しかし実際には個々の解釈の違いや固定観念、無意識の壁が原因で、物事がスムーズに進まないことが多いのも現実です。

たとえば障害者雇用に関する課題、性別の違い、家庭環境の違いなどがあります。大切なのは違いを批判するのではなく、それを理解し、協力し合うことです。理想論に聞こえるかもしれませんが、当社はそうした人間関係を築くことを目指しています。

この考え方は、社内だけでなく、社外にも広げていきたいと考えています。私たちは「お互いの楽しさを実現するために存在している」というミッションを体現できる集まりでありたい。そのためにも、ウィズダイバーシティを通じて、多様性への理解を深めていくことが重要だと考えています。

福寿:今、障害者雇用をあきらめかけている企業や、一生懸命取り組んでいるものの、「どうやって商品を販売すればいいのか」「サービスを多くの人に届けるにはどうすればいいのか」「事業を継続していくには?」と悩んでいる障害者福祉事業者の皆さんに、この想いが届くことを願っています。

想いを同じくする仲間が集まり、支え合うことで、働く場が広がり、今はまだ働けていない方々にも新たな機会が生まれる。そんな環境をつくっていけたらと思います。

今日はお時間をいただき、ありがとうございました。

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