2026年4月に新たに参加した株式会社キャリアコンサルティング(本社:東京都千代田区、代表取締役 室舘勲氏)は、すでに自社で障害者を雇用し、法定雇用率を達成していました。それでも、今後の事業拡大や従業員数の増加を見据え、持続可能な障害者雇用のあり方を実現するため、新たな一歩を踏み出しました。
「凜とした人づくりで日本を元気に!」を掲げる同社は、なぜウィズダイバーシティへの参加を決めたのでしょうか。室舘勲氏に、参加の背景や発注を通じて感じていること、障害のある方と共に働くことについて、発起人である株式会社ローランズ代表取締役・福寿満希がお話を伺いました。(対談実施日:2026年7月6日)

「凜とした人づくり」を軸に、教育から就職・採用支援まで幅広く展開

福寿:今日はお時間をいただきありがとうございます。まずはキャリアコンサルティングさんの事業内容について教えてください。
室舘:当社は「凜とした人づくりで日本を元気に!」を掲げ、教育を軸にさまざまな事業を行っています。中心にあるのは、リーダーシップの基礎を学ぶ教育事業「しがく」です。また、大学生の就職活動を支援する「プレスタPlus」や、企業の新卒採用支援、セールスプロモーション支援なども手がけています。




日本製の記念品や伝統工芸品を扱う「これいい和」も、こうした事業の一つです。日本の技術や文化を次の世代へつなぐことも、人づくりや日本を元気にすることにつながると考えています。

大賞を受賞した、オリジナル商品「卓上灯篭」
福寿:事業の分野は幅広いですが、すべてに「人を育てる」という考えが通っているのですね。
室舘:そうですね。会社や社会を良くするには、最後は人だと思っています。知識や技術だけでなく、周囲から信頼され、自分の役割を果たせる人を育てていくことを大切にしています。
勤怠管理からAI・システム開発まで。一人ひとりの力を生かす自社雇用
福寿:ウィズダイバーシティへの参加以前から、キャリアコンサルティングさんでは障害者雇用に取り組まれていました。どのような仕事を担当されていますか。
室舘:現在は3人が働いています。Aさんには勤怠管理を任せています。Bさんには、カーペットや椅子などの状態を確認し、清掃や整理を行う、設備管理に近い業務を担当してもらっています。
CさんはAIを活用した意見提言や問題提起、システム開発に携わっています。Cさんはテレワークが中心ですが、打ち合わせなどで月に1、2回は出社しています。
福寿:一律に同じ業務を任せるのではなく、一人ひとりの力に応じて仕事をつくられているのですね。
室舘:そうですね。障害があるからこの仕事、と決めつけるのではなく、その人に何ができるのか、どのような働き方なら力を発揮できるのかを見ています。私自身、必要な配慮は行いながらも、過度に特別視するのではなく、一人の社員として接することを意識しています。
法定雇用率は達成していたが、驚きから始まったウィズダイバーシティとの出会い

福寿:初めてウィズダイバーシティの共同雇用の取り組みを聞いたとき、どのように感じられましたか?
室舘:私は自社雇用しか知らなかったので、ウィズダイバーシティの話を聞いたときは「こういう取り組みがあるのか」と大変おどろきましたね。
福寿:参加を検討された時点で、キャリアコンサルティングさんは自社雇用によって法定雇用率を達成していました。それでも組合への参加を決めた理由は何だったのでしょうか。
室舘:当社は以前から障害のある方を採用していますが、法定雇用率をかろうじて満たしている状況です。
今後の事業計画では、社員数は増えていく見込みをおいています。当然、社員が増えれば、必要となる障害者雇用数も増えます。ただ、必要なタイミングで必ず弊社の働き方に合う方を採用できるとは限りません。
仕組みを聞いて、率直に「これは素晴らしい」と感じました。異業種で資本関係がない中小企業が集まり、仕事が障害福祉事業所に集まることで、雇用が増え、障害がある方のスキルアップや成長にもつながる。
法定雇用率の数だけ達成するのであれば当社だけでもできるかもしれません。しかし、持続可能な雇用を継続するというと、1社だけでできることには限界があります。
ウィズダイバーシティの説明を伺ってすぐに役員会に諮り、参加までは、トントン拍子に進んだと思います。
福寿:キャリアコンサルティングさんは意思決定がとても早かったことが印象的でした。
室舘:もちろん、福祉事業所のみなさんに発注する費用もかかることなので、何も考えずに決めたわけではありません。
ただ、役員で話し合った結果、当社の事業規模であれば取り組めるだろうと判断しました。それ以上に、「これは良い取り組みだ」という感覚がありましたね。最終的にはご縁と直感も大きいです。制度上の必要性だけではなく、人との出会いや直感も、経営の決断では大切だと思っています。
コーヒー、お弁当、花、グリーン。日常の発注が誰かの仕事になる
福寿:参加後は、早速コーヒーやお弁当、花、レンタルグリーンなど、福利厚生の充実につながる商品やサービスをご利用いただいています。実際に取り組んでみて、いかがですか?
室舘:今は商品やサービスを購入している段階ですが、社員からの評判も良いですね。コーヒーも社内で「これ、おいしいよね」という話になって、もっと発注しようと伝えました。社会貢献になるからというだけではなく、純粋に商品としておいしいんです。

当社では、受賞者や成績優秀者に花を贈る機会も多くあります。毎月、誕生日を迎えた社員を祝う会も開いていて、多いときには20人近く集まります。そのときのお弁当もお願いしています。先日はタコライスを発注しました。


福寿:一階のレンタルグリーンのメンテナンスもお任せいただいています。
室舘:以前は人工の観葉植物を置いていたので、最初は替えるかどうか少し迷いました。ただ、話をする中で「思い切って変えてみよう」と決めました。今はきれいに整えてもらえて、とても満足しています。

福寿:その他にも、現在はお中元用のドライフルーツも発注していただいています。
室舘:これまでは私の地元の青森県のりんごジュースなどを贈ることが多かったのですが、今回はドライフルーツを選びました。こちらもとてもおいしい商品ですよね。支援のために選ぶというより、受け取った方に心から喜んでもらえるものとして選んでいます。

福寿:ドライフルーツは、大きな単位で仕入れたものを、障害のあるスタッフが一つずつ小分けにし、商品化しています。お弁当の製造にもスタッフが朝から製造して準備しています。
室舘:商品を使うことが、そのまま誰かの仕事につながっているのは良いですよね。しかも品質が高く信頼できますから、無理なく継続できます。
効率だけでは人は育たない。「不足の美」から考える障害者雇用
福寿:中小企業が障害者雇用に取り組むことには、どのような意味があるとお考えですか?
室舘:私は、まず経営者の考え方が大事だと思います。今はコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスが重視され、AIを使えば便利になるという話も多いですよね。ただ、人を育てようと思ったら、効率だけでは不十分です。
茶道には「不足の美」という考え方があります。すべてが完成した状態を良しとするのではなく、足りない部分を相手と補い合う。例えば、茶席では満開の花ではなく、これから咲く蕾を飾ることがあります。招く側と招かれる側が互いに補い合うことにも、美しさがあるという考えです。
障害のある方と働くことにも、それに通じるものがあると思います。一方的に支えるのではなく、互いに補い合いながら働く。その中で、自分たちが学ばせてもらうことも多くあります。

福寿:法定雇用率の達成だけではなく、社員教育や組織づくりの機会として捉えているのですね。
室舘:そうです。私は最近、「異」がつく人と一緒にいることが大切だと考えています。異性、異年齢、異国の人など、自分とは異なる背景や感覚を持つ人と関わることで、感性や考え方が広がります。
障害のある方も含め、自分とは異なる背景や経験を持つ人と一緒に働くことで、自分の足りない部分に気づけます。効率だけを求めて、同じような人だけを集めていては、人も組織もなかなか育たないと思います。
「室舘さんが言うなら」と思われる存在に。経営者から広げる障害者雇用
福寿:一方で、障害者雇用を負担に感じたり、最初から難しいと考えたりする経営者もいます。そうした意識を変えるには、どのような働きかけが有効だと思いますか?
室舘:経営者にも、それぞれ尊敬している人や憧れている人がいるはずです。その人から「その考え方ではいけない」「こういう取り組みが必要だ」と言われれば、考え方は変わると思います。
普段は人の話をあまり聞かない経営者でも、自分が尊敬する人の言葉には耳を傾けます。40代でも、50代でも、60代でも、70代でも同じです。尊敬する人から言われれば、「そうですか」と受け止める。意識を変えるきっかけとして、とても大きいと思います。
福寿:制度を説明するだけでなく、信頼している人から伝えてもらうことが重要なのですね。
室舘:そう思います。ウィズダイバーシティは、まだ何十年も続いている取り組みではありません。ただ、継続していけば、雪だるま式に少しずつ広がっていくはずです。
私自身も、もう少し魅力や影響力を持って、「室舘さんが言うなら考えてみよう」と、経営者や団体の方に思ってもらえる存在になりたいですね。今日の取材も、取り組みを広げる一つのきっかけになればと思っています。
本業で培った人づくりを、障害のある方の学びにもつなげる
福寿:キャリアコンサルティングさんが提供している「リーダーシップの基礎教育『しがく』」には、障害のある方も参加しているそうですね。
室舘:はい。障害のある方も、「しがく」に通ってくださっています。
「リーダーシップは生まれ持ったものだ」と言われることがありますが、私は自分の経験から、そうではないと考えています。リーダーシップの基礎は、学びと実践によって身につけられるものです。そうした考えから「しがく」をつくりました。
福寿:コミュニケーションに悩んでいる方も多いため、人気のある講座になっていますね。
室舘:「しがく」では、明るく元気に振る舞うこと、信頼関係を築くこと、自分の考えを伝えること、公のために行動することなどを段階的に学びます。知識を聞いて終わりではなく、日常で実践することを重視しています。
障害の有無にかかわらず、人は学びによって成長できます。その可能性を広げる機会をつくることが大切です。
福寿:本業で培ってきた人づくりの知見が、障害のある方の成長や社会参加にも生かされているのですね。
いきなり直接雇用でなくてもいい。仕事を通じて生まれる「橋渡し」
福寿:私たちは、障害者雇用を諦める企業をなくしていきたいと考えています。国内の障害者数は1,165万人で、そのうち18歳から64歳までの在宅者(労働可能人口)は487万人です。一方、雇用されている方は70.5万人で、就労率は14.5%にとどまります。

働きたいと考えている方がいて、企業側にも雇用したいという思いがある。それでも、仕事や接点がなく、すぐには直接雇用へ進めないことがあります。
そこで、まずは商品やサービスの発注を通じて仕事を生み、関わりをつくる。その経験を、将来的な直接雇用へつなげる流れをつくりたいと思っています。共同雇用を、直接雇用を諦める前の選択肢として広げていきたいです。
室舘:本当に素晴らしいと思います。働く機会につながっていない人に、まず仕事の機会をつくっていくことは、とても大事です。
働き方は、何も最初から正社員になることだけではありません。その間には、さまざまな働き方や段階があっていい。障害のある方にとっても、仕事を経験し、企業との関係をつくる橋渡しが必要です。
福寿:共同雇用で仕事の経験を積み、その先に参加企業などでの直接雇用が生まれる。その循環をつくることが、私たちの今後の大きな目標です。
室舘:仕事を発注するところから関係が始まるのであれば、企業にとっても取り組みやすいと思います。まず関わってみることで、障害のある方に対する理解も深まり、自社での雇用を考えるきっかけにもなりますよね。
まずは関わることから。働きたい人と企業をつなぐ選択肢を広げる
福寿:ウィズダイバーシティは、参加企業20社、算定基礎労働者数4,082人、障害者雇用数(カウント数)は213人となりました。組合全体の実雇用率は5.23%(※)です。※2026年6月1日時点。
ただ、数字を達成することだけが目的ではありません。企業が必要とする仕事を障害のある方が担い、その仕事を通じて力を発揮し、成長できる環境をつくること。そして、共同雇用から直接雇用へ進む道を増やすことが大切だと考えています。
室舘:良い商品やサービスを利用することが、働く機会につながり、さらに直接雇用への橋渡しにもなる。とても意義のある取り組みだと思っています。
障害者雇用を特別なものとして遠ざけるのではなく、まず関わってみることが大事です。異なる人と一緒に働くことは、会社や社員にとっても学びになります。
私たち自身も参加企業として発注や交流を続け、この取り組みを周囲の企業や経営者に伝えていきたいですね。
福寿:これからも一緒に、働きたい人と企業をつなぐ選択肢を広げていければと思います。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

